本389…母子像
母子像…筒井康隆著
歴史学者の私は、古い家で妻と赤ん坊と暮らす。私は露店で白いサルの玩具を買い、赤ん坊のお気に入りに。仕事に行き詰った時気まぐれに子供の様子を見に行くと左手が消えており、子供を引っ張ると腕は出てきたがその手にサルの玩具を握っていた。
或る日、妻と赤ん坊の姿が消え、一切の痕跡が無くなる。赤ん坊の泣き声があちこちから聞こえるようになり、妻子を追ううち、サルの玩具が2人を異空間に引きずり込んだことに気付く。少しして、妻子の姿が宙に見えた時声を掛けると、少し反応するがこちらは見えないようだった。
サルの玩具がポケットに入っていた時、子供の泣き声を頼りに右手でサルの玩具握り、左手で右手を掴むと左手が消えかかる。空間を探すと、上部に見えない妻の体があり、左手で赤ん坊ごと妻を現実世界に引っ張り下ろすが、片手だけでは難しく、もう少しというところでサルの玩具を放してしまった結果、妻子は戻るが、二人とも肩から上がが無いままになってしまう。
今、母子は部屋の隅で暮らすが、首が無いため会話が出来ず、二人には時間も経たない様だ。サルの玩具はもう現れない。或る夜、ガラス越しに庭を見ると、妻子の首があった。眠る赤ん坊に頬ずりするように目を閉じる妻、それは絵画の母子像のようであった。家に引き籠もるように暮らしていた妻とアルビノを背負って生まれた子供は、現実社会で生きて行くよりもこのままでいいのかもしれない。この家がある限り…
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